日々の雑感

私が毎日見たり聞いたりしたものに対して思ったことを書き連ねていきます。

【書評】「空気の研究」 私たちを支配するもの

みなさん、こんにちは。風邪などひかれておりませんか?

最近はすっかり寒くなり、きちんと寝るときに暖かくしておかないと家の中で凍え死んでしまいそうです。また、ついこの間までクリスマスだ大晦日だ正月だと街が寒さに負けないお祭りムードに包まれていたのに、ここ数日は皆それを忘れ去ってしまったかの様にお寒い空気が漂っています。
ところで、空気ってなんでしょう。
もちろん流体力学的なソレではありません。会話でよく使われるアレです。
大雑把に定義すると、私たちは場に流れる目には見えない共通の認識、感情のようなものを空気と呼んでいます。
が、その実態についてよく知らずに過ごしている者が私を含め多数派ではないかと思います。
しかしそれで良いのでしょうか。私にはどうしてもそうは思えません。空気に支配されて自分の考えを持たないのは嫌です。

そこで本日は、その「空気」に関して考察した本を一冊ご紹介します。

 

 

『「空気」の研究』著者:山本七平

 

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

 

 

日本人はしばしば「いや、あの時の空気ではそうせざるを得なかったんだ」と過去の失敗を語ります。
それは太平洋戦争時の旧日本軍に特に顕著に見られ、当時日本屈指のエリートが揃っていたはずの海軍でさえ、負けるとわかっている戦いにむざむざ挑んでしまった。
戦後、軍部は解体され、天皇人間宣言とともに皇国は終わりました。
しかし、その後民主主義体制へと変貌した日本においても政治、経済など様々な分野において上記の「空気」という言葉は横行し続けます。

無責任の体系とも称されるその社会構造を、この本では著者が鋭く評論していきます。
特に、ある対象について善悪の度合いで測るといった相対的な把握をせず、善性のみを認める絶対的な把握をしてしまうと、空気に逆らえなくなってしまうという記述は身につまされます。
他にも、空気は誰が何故生むのか、発生した空気に支配されない方法、日本社会がどのように進んできたか、反対に空気に支配されない社会とはどういうものかなどが詳細に書かれています。
ただ、これらはこの本の第1章に過ぎません。更に論考が進むのです。
本は全体で3つのパートに分けられ、それぞれ「空気の研究」、「水=通常性の研究」、「日本的根本主義について」と題されています。
「日本的根本主義について」はある程度内容的に独立していて、更に「空気」という考え方に関しても簡単に理解できると思うので、どこから読んでも良いと思います。
ともすると1983年刊行当時の時事問題を扱う第1章が最も読みづらいかもしれません。

 

日本人論的な要素を多く含むため、そういうカテゴリー化はどうなんだとも思わなくもないですが、今でも日本に存在する空気を正しく認識し、それを打ち破るためにも知っておいて損はない内容だと思います。
また、学校生活に悩んでいる生徒にもオススメできます。

留意しておく点としては、この本の論理には多少乱暴なところがあるので、本書の表現を借りれば、自身の経験を重ねて「臨在感的な把握」を行い、記述内容を「絶対化」することはしないで下さい。